2015-09-22

通天閣



西加奈子著「通天閣」


いろいろありまして通院生活してました。

その病院の待ち時間が異常に長い。
8時半に受付してリハビリと診察が終わるのが14時みたいな・・・。

貴重な休日の半分は病院で過ごすような感じだったので、時間を持て余すのも勿体ないし、普段はなかなか時間の取れない読書などしてました。


西加奈子著「通天閣」

夢を失いつつ町工場で働く中年男と、恋人に見捨てられそうになりながらスナックで働く若い女。
ふたりは周りの喧騒をよそに、さらに追い込まれていく。
しかし、通天閣を舞台に起こった大騒動がふたりの運命を変えることに…。(Amazonより)


(※以下ネタバレ含みます)


直木賞受賞で話題の西加奈子。
著作は2作品しか読んだことなかったので、手に取ってみました。


なんというカタルシス・・・。
病院の待合ロビーで読んでたんですが、人目を気にしつつも我慢できず泣いてしまいました。

急いでトイレに駆け込み、顔を洗ってクールダウンし、改めて待合ロビーへ。
続きを読むとまた泣いてしまう・・・でも気になる・・・。
そしてページをめくり、またポロポロ泣いてトイレへ駆け込むという。


映画でも小説でもそうなんですが、ハリウッド大作のような非現実なストーリーはともかくとして、日常を描くような人間ドラマだと、主役っぽい人が主役の作品ってあまり惹かれません。

主役っぽい人というのは、普通にいるだけで光り輝いてるような人。
微妙に的外れではありますが、分かりやすく端的に言えばカッコ良いとかキレイとか、そういうことになるのかもしれません。

うまく言えないんですが、主役っぽい人にスポットライトを当てられても、なんかピンとこないんですよね。
ただでさえ光り輝いてるところに更に光を当てられても、光量が強すぎて飛んじゃうというか。

トムクルーズやキムタクに感情移入するのはただでさえ難しい。
仕事で苦労してたりとか、恋愛でもめてたりしても、ヴィジュアルとキャラ設定の組み合わせに無理があるので、どんどんリアリティが欠けていってしまう。
結果的に物語との距離もどんどん開いていってしまいます。


なので、主役っぽくないエトセトラな人にスポットライトを当てた物語が好きです。
自分自身もエトセトラな人なので、前途と違い感情移入もしやすいし、そこにスポットライトが当たるとなんか救われる。

そんなスポットライトの当て方もセンスなんですよね。
下手な当て方をすると、作為的に不幸をウリにするようなテレビ的な感じになってしまう。

今作のスポットライトの当て具合は絶妙です。


感情を表にうまく出せず、心の中でアレやコレやに毒づいて、変に見栄っ張りなところがあるから無駄にストレス感じて。

僕は今でこそ比較的協調性のある人になりましたが、なんかこの中年男に対して愛おしいぐらいに共感できるんですよね。
その殻を破れば世界は違ってみてるのになぁ・・・と、そんな展開を待ち焦がれるように読み進めました。

そして、そんな殻を被ることになる出来事が立て続けにラストで待ってます。
殻を被ったことに対する喜びと、そこに絡んでくるもう1人の主人公である若い女の子のエピソードによって、前途したように待合ロビーとトイレを往復することになりました。


クスクス笑えてポロポロ泣けて、ギュ~っと心臓を鷲掴みされるように苦しいのだけど、ス~っと救われる感じ。

ちょっと毛色は違うけど、石井裕也監督「川の底からこんにちは」を観た時のような、しっかりと重みのある爽快感でした。

西加奈子、恐るべし・・・。
この作家さんが大好きなのだと確信できる作品でした。