2015-12-25

Star Wars / The Force Awakens




J・J・エイブラムス監督「スター・ウォーズ / フォースの覚醒」

仕事道具のパソコンが壊れるという緊急事態から逃避するように、憂さを晴らすべく観てきました。


予告が公開されてから、今か今かとワクワクしながら待ってた本編。
期待値を上げてしまうとガッカリすることも得てして多いので、予告以外の前情報は一切カットしてました。

しかし、十分に期待に応える面白さでした♪
観てない人にハードルを上げてしまうのは心苦しいけど、

A long time ago in a galaxy far, far away....

もう恒例のオープニングを改めて観れただけで満足でしょ♪
これ観れただけで1800円払う価値あります☆

ディズニーといえばお決まりのオープニングクレジット(シンデレラ城のアレ)をカットした心配りに頭が下がります。
個人的にはあったとしても気にならなかっただろうけど、確かにスターウォーズの世界観には合わないという意向も納得。


予告で全スターウォーズファンを歓喜させたハン・ソロやチューバッカには、当然ながら本編でも歓喜するんですが、本編のいたるところにオリジナル三部作オマージュ盛りだくさん♪

僕ぐらいのスターウォーズファンでもニヤニヤしちゃうぐらいなので、本気のファンの人だともっと気付くオマージュあると思います。


「ファントム・メナス」を観た時の何百倍もアガりました☆
あの時はもう1回観ようとは思わなかったけど、今回は映画館から出てきて即また戻って観たいぐらいでしたもの♪

ツッコミどころはアレコレとありますが、そんなことはどうでもよくなるぐらいに楽しかった♪

人気シリーズの新作って、シリーズのファンが雑にくっつけたような駄作も多いですが、オリジナル三部作のファンの気持ちも汲みつつ、新三部作のスタートとしても盛り上がれる、きちんと本気で丁寧に作られた新作でした。

新キャラクターも良いし、レイは新ヒロインとして最高にカッコよくキュート☆
BB-8なんて今更ラジコン欲しくなるぐらい可愛いし、今後への布石として気になる要素もたくさんあるし、次へと繋がる終わり方も抜群で、ついに新たなサーガが始まったんだなぁ〜とホント嬉しい☆

むしろ今作はスターウォーズファンへのおもてなしという感じで、次作からこそ本番ということで再来年「エピソード8」への期待も高まります♪


とりあえずオリジナル三部作を観返して、もう1回は観に行きます☆

2015-12-07

グラスホッパー



瀧本智行監督「グラスホッパー」

当初は観る予定ではありませんでした。

メンズデーに、午前中から別の映画を観に行ったんですが・・・それがホント酷くて・・・。
せっかく映画に刺激を貰おうとやって来たのに、このままでは帰れぬわ!!と、上映時間のタイミングの良かったコチラも観ることにしました。
映画を梯子するなんて、ホントに久しぶりです。


何よりも大きな発見だったのが、蝉役の山田涼介。

ジャニーズの子だということは、普段あまりテレビを見ない僕でもCMなどで見かけて知ってはいたんですが、これほど演技力のある子だとは知りませんでした。

アイドルって、普段からの立ち振る舞いにも言動にも、様々な制約があるじゃないですか。
汚い言葉遣いはしちゃダメだし、アイドルとしての純血みたいなモノを演じなければならない。

そんな制約から解放されて、アイドルとは真逆と言ってもいい残忍な殺し屋役を、思う存分に楽しんでるような若いパワーを感じました。

最近では、上手い下手ということなく「無難に演技をこなせる若手俳優」が多いと感じますが、この子は上手い♪
アイドルとしてダンスをしてることもあってか、アクションも見応えあったし。
予告でも流れますが、劇中の「そいつはヘヴィだな」の言い方・・・もうたまりません♪

この発見だけで観た甲斐はありました。


観始めると、原作のストーリーをだんだんと思いだしてくるもので。
あれ?こんなだったっけ?とか、あぁここは変えちゃったんだ・・・とか、原作との違いに気付いてきます。

いろいろ言い始めたらアレコレとありますが、それはそれとして僕は娯楽作品として全然楽しみました♪

伊坂幸太郎の原作は、ずいぶん前に読んでたんですが、良い感じに原作の記憶が薄れてきたタイミングだったのが良かったかも。
きっと、この前に観た映画の酷さが、振り幅として効いたということもあるとは思います。


原作ファンからは不評らしいですが、基本的に原作好きなら実写は観ちゃダメです。

登場人物や舞台になる風景を、自分の想像で好きなようにイメージしながらストーリーを楽しめる小説は、そこで完璧に完成してる。
なので、実写化されても絶対に原作を超えることは無いので。

そこを粗探しのように「ここが違った」みたいに非難するのは、いかがなものかと思います。
逆に「原作に忠実だった」という高評価も目にすることがありますが、だとすれば知ってるストーリーを映像として追うだけなので、わざわざ観る必要性は感じませんし。


小説は作家ありき。
なので、多少の制約などはあると思いますが、作家の思うように自由に書けます。

映画も監督ありきではあるんですが、小説の作者に比べると自由度は低い。
映画は様々な人々や企業が絡んでくる、大きなお金が動くビジネスなので、何でもかんでも監督の思うようには出来ません。

そういう意味でも、実写化されたモノが原作より面白くなくて当然なんです。
原作がベストセラーだったりしたら尚更。


ここで改めて原作を読み返してみるのも面白そうなので、いま読んでる本を読み終わったら再読してみようかな♪

2015-09-28

葉桜の季節に君を想うということ




歌野晶午著「葉桜の季節に君を想うということ」


最後2行の衝撃で、前評判に漏れず自分も2度読みした、乾くるみ著「イニシエーション・ラブ」

友達と「これは映像化は不可能だね~」なんて話してたら、ちょっと前に映画化されましたね。
どんな形でアレを映像化してるのか気になるところですが、堤幸彦演出が苦手なので未見です。

そんなタイミングもあり、この機会に別の著作も読んでみるかと「セカンド・ラブ」を手に取って、あまりの後味の悪さに幻滅し・・・。
という話の流れから知人に教えてもらった、歌野晶午著「葉桜の季節に君を想うということ」


「何でもやってやろう屋」を自称する元私立探偵・成瀬将虎は、同じフィットネスクラブに通う愛子から悪質な霊感商法の調査を依頼された。
そんな折、自殺を図ろうとしているところを救った麻宮さくらと運命の出会いを果たして―。(Amazonより)


(※以下ネタバレ含みます)


序盤から中盤にかけて、微妙にコミカルな主人公のキャラクターや語り口が自分に合わず、うまく物語に乗っていけませんでした。

また3つの時系列が前後するので、1つの話に入っていくとまた違う時系列の話が始まったりして、気持ちを戻すのが少しストレスでした。
一気読みすればついていけそうだけど、間が空くことで集中力が切れてしまったということもあるかも。


そんな気持ちを繋ぎとめてくれたのは、別れた妻と娘を想う安藤士郎とのエピソードと、加速する買い物癖による借金返済のために悪に手を染める古屋節子のエピソード。

前者は人情に訴えてくるキャラクターもあって馴染み易かったし、後者は一気にシリアス路線で罪を重ねる無限ループから抜け出せない中で自分を肯定する様は緊張感がありました。


ミステリーなので、どんなカタルシスがあるのかと構えて読むわけです。

読んでる段階では関連性が見えてこない3つの時系列(現在と数年前と探偵時代)が最後どのように絡んでくるのか、仮説を立てながら読み進めてたんですが・・・終盤は一気に読みました。

序盤から中盤にかけて馴染めなかった主人公のキャラクターですら布石になってたとは。
どこで勘違いしてたのだろうと、遡って答え合わせするように読んでみたりして。

見事にやられました。
ホント良く出来た小説ならではのミスリードを利用したトリックです。


これまた映像化は不可能です。

「イニシエーション・ラブ」が映画化されると聞いた時に、主観を取り入れれば映像可能かも・・・と考えたりしたんですが、こちらも同様の手法で映像化できなくはないです。
かなり無理あるので、やっぱり映像化として成立できないと思いますが。


そんな終盤で主人公が自身の人生論をとうとうと語るんですが、それが圧倒的バイタリティでもって超ポジティブ。

あまりにもバイタリティが強すぎて、うまく自分の中に取り入れられなかったんですが、それでも言ってることはとても共感できたし、なんか前向きな元気をもらいました。

あくまで人生論だけに関して共感したのであって、語り合う2人には全く共感できず。
むしろ嫌悪感でしたが、それもまた自分を正当化する犯罪者の心理なのかな・・・と思ったりして。

2015-09-22

通天閣



西加奈子著「通天閣」


いろいろありまして通院生活してました。

その病院の待ち時間が異常に長い。
8時半に受付してリハビリと診察が終わるのが14時みたいな・・・。

貴重な休日の半分は病院で過ごすような感じだったので、時間を持て余すのも勿体ないし、普段はなかなか時間の取れない読書などしてました。


西加奈子著「通天閣」

夢を失いつつ町工場で働く中年男と、恋人に見捨てられそうになりながらスナックで働く若い女。
ふたりは周りの喧騒をよそに、さらに追い込まれていく。
しかし、通天閣を舞台に起こった大騒動がふたりの運命を変えることに…。(Amazonより)


(※以下ネタバレ含みます)


直木賞受賞で話題の西加奈子。
著作は2作品しか読んだことなかったので、手に取ってみました。


なんというカタルシス・・・。
病院の待合ロビーで読んでたんですが、人目を気にしつつも我慢できず泣いてしまいました。

急いでトイレに駆け込み、顔を洗ってクールダウンし、改めて待合ロビーへ。
続きを読むとまた泣いてしまう・・・でも気になる・・・。
そしてページをめくり、またポロポロ泣いてトイレへ駆け込むという。


映画でも小説でもそうなんですが、ハリウッド大作のような非現実なストーリーはともかくとして、日常を描くような人間ドラマだと、主役っぽい人が主役の作品ってあまり惹かれません。

主役っぽい人というのは、普通にいるだけで光り輝いてるような人。
微妙に的外れではありますが、分かりやすく端的に言えばカッコ良いとかキレイとか、そういうことになるのかもしれません。

うまく言えないんですが、主役っぽい人にスポットライトを当てられても、なんかピンとこないんですよね。
ただでさえ光り輝いてるところに更に光を当てられても、光量が強すぎて飛んじゃうというか。

トムクルーズやキムタクに感情移入するのはただでさえ難しい。
仕事で苦労してたりとか、恋愛でもめてたりしても、ヴィジュアルとキャラ設定の組み合わせに無理があるので、どんどんリアリティが欠けていってしまう。
結果的に物語との距離もどんどん開いていってしまいます。


なので、主役っぽくないエトセトラな人にスポットライトを当てた物語が好きです。
自分自身もエトセトラな人なので、前途と違い感情移入もしやすいし、そこにスポットライトが当たるとなんか救われる。

そんなスポットライトの当て方もセンスなんですよね。
下手な当て方をすると、作為的に不幸をウリにするようなテレビ的な感じになってしまう。

今作のスポットライトの当て具合は絶妙です。


感情を表にうまく出せず、心の中でアレやコレやに毒づいて、変に見栄っ張りなところがあるから無駄にストレス感じて。

僕は今でこそ比較的協調性のある人になりましたが、なんかこの中年男に対して愛おしいぐらいに共感できるんですよね。
その殻を破れば世界は違ってみてるのになぁ・・・と、そんな展開を待ち焦がれるように読み進めました。

そして、そんな殻を被ることになる出来事が立て続けにラストで待ってます。
殻を被ったことに対する喜びと、そこに絡んでくるもう1人の主人公である若い女の子のエピソードによって、前途したように待合ロビーとトイレを往復することになりました。


クスクス笑えてポロポロ泣けて、ギュ~っと心臓を鷲掴みされるように苦しいのだけど、ス~っと救われる感じ。

ちょっと毛色は違うけど、石井裕也監督「川の底からこんにちは」を観た時のような、しっかりと重みのある爽快感でした。

西加奈子、恐るべし・・・。
この作家さんが大好きなのだと確信できる作品でした。

2015-09-12

Slipknot “Custer”

バケモノの子



細田守監督「バケモノの子」


(※以下ネタバレ含みます)


映画館で観終って家に帰り、自分の中での解釈がまとまったのはお風呂に入ってる時。

単純に“親子愛”みたいなシンプルなテーマではなく、そこに“成長”に伴うアレコレが絡んでくるので、消化不良を起こしてしまいました。

賛否が分かれるのも納得です。
詰め込み過ぎと感じなくはないですし、物語として冒険活劇みたいなエンターテイメントを期待すると、きっと物足りないだろうし難解だと思います。

とは言え、個人的には十分に見応えのある仕上がりでした。


相当リアルに描かれた人間界(渋谷)と、中国やモロッコをイメージさせるようなバケモノ界(渋天街)は、どちらも季節の移ろいと共に見事に描かれてました。

それぞれのキャラクターも良い。
気になる声優陣では役所広司は完璧でした。
俳優やタレントが声優をするのは、役者の顔がチラついて嫌いなんですが、チラついてもそれを塗りつぶすほどにバケモノ(熊徹)でした。

ジャッキーチェン(蛇拳)へのオマージュには不意打ちくらって笑っちゃったし、コミカルな要素もしっかりと効いてます。


宮崎駿監督「千と千尋の神隠し」という作品があります。

異世界に迷い込んだ少女が、そこで生活しながら成長していく物語。
キャラクターや舞台設定などは魅力的で、人気が高いのも納得な作品ですが、個人的に“成長物語”という映画の軸になる大きなピースが最後まで腑に落ちませんでした。

要は、成長物語としての時間軸がショートカットすぎて、冒頭の千尋(主人公)と中盤以降の千尋の、人が変わったような急速な成長のギャップへの違和感を引き摺ってしまい、最後まで主人公に感情移入できなかったんです。

ずっと俯瞰で物語を見てる感じで、物語との心の距離が縮まらないというか。

蛇足ですが、上記のことから宮崎駿という人は子育てにそれほど積極的に関わることがなかったのだろうなぁと感じました。
我が子の成長はじっくりじわじわですが、よその子の成長はショートカットして感じますもんね。

それだけアニメーション制作に時間と心血を注いだからこそ、世界に名を馳せたのでしょう。
これは勝手な想像ですけど。


なぜ「千と千尋の神隠し」を持ち出したかというと、今作から「千と千尋の神隠し」へのアンチテーゼを感じたから。

九太(主人公)の9歳から17歳までを描いてるので、きちんと成長物語として成立してるんです。
宮崎駿引退というタイミングもあっての拡大解釈かとも思うので、これもまた勝手な想像ではありますけど。


“親子愛”というテーマが軸ではあるんでしょうが、個人的にはそこよりも“成長(思春期)”に伴うアレコレに感情移入しました。

悪役ということでもないんですが、九太(主人公)と敵対することになるキャラクターが、いわゆるダークサイドに堕ちていくわけですが、表向きはダークサイドに堕ちそうにない境遇。
経済的に困窮してるとか、壮絶なイジメに遭ってるとか、心を病むようなエピソードがあるとか、そんなダークサイドに堕ちるなりの分かりやすい理由はありません。

父親は街の誰もが認める立派な地位のある立派な人物で、仲の良い弟もいて、もちろん家も立派なお金持ち。
かと言って、親との関係がギスギスしてるでもないし、恵まれているが故の反抗心が起こるというでもなく、自分と周りに対する違和感からじわりじわりと心の闇が広がっていき、決定的な出来事でダークサイドに堕ちます。

物語の冒頭で、親を亡くした主人公は、心無い親戚に引き取られるところを拒絶し、自分を取り巻く全てに絶望し、心に闇を抱えてバケモノ界(渋天街)へいざなわれます。

終盤、九太が彼をダークサイドから引き揚げる際に、自分も同じだと言います。
九太と青年になって知り合った女の子も同じようなことを言います。

思春期の多感な成長期においては、劣悪でも無い恵まれた環境であろうと、立派な親がいようと、誰もが心に闇を抱えていて、そこに堕ちてしまう可能性は誰にでもある。


ダークサイドに堕ちた彼は、ここ数年でメディアを騒がせることの多い理解しがたい“少年犯罪”を連想させます。

そんな犯罪を起こしてしまうぐらい、心に大きな闇を抱えてしまい、耳を疑うような犯罪を起こしてしまう可能性は誰にでもあって、そこから救い上げられる人は、同じ闇を抱える、同じ境遇での苦しみを知る人でしかないということ。

メディアできれいごとを並べ立てる有識者でも、同じ目線に立てぬ教育者でもない、もしや親でもないのかも・・・。

そこに対する細田守監督としての答えがあります。
九太がダークサイドに堕ちなかった理由こそが答えです。
その答え自体は未完成な答えだと思いますし、理想論だと感じる部分もあるので、まだ僕の中でもしっくりきてません。

1回観たぐらいでは、全ての消化吸収できてませんし、親と子の関係が一筋縄でいかないことは自分自身の思春期の頃を思い返すと容易に想像できます。

そういう部分での問題提起みたいなものが、頭の中で明確な形にならぬまま余韻を引き摺るので、単純に「面白かった~♪」とはならないし、誰もが面白いと感じるでもないと思います。


個人的には「時をかける少女」から細田守監督作品を観続けてきて、監督の作品として、大きな1歩になる作品だと思います。

劇場公開時に2度観ることは叶わなかったので、DVDでまた観ます。


世間というよりも、ビジネスな部分での大人たちから“宮崎駿引退後の重責を担う”みたいな期待をかけられることに伴うプレッシャーは、想像の域をゆうに超えて想像できぬほどに大きいと思うんですね。

それによって、本来自分が作りたいモノが作れないような環境が周りから固められてしまうことが怖い。
今後、無理なく自分の思うような作品作りが出来ることを願うばかりです。

2015-08-28

海街diary



是枝裕和監督「海街diary」

(※以下ネタバレ含みます)


原作の漫画は未読。
それが幸いしたようですが、すごく良かったです。

鎌倉の街並み、そして四季の移ろいが、これでもかというぐらいに美しい。
邦画の場合、日本の四季の美しさを観せてもらえるだけで十分満足だったりします。

何てことの無い普遍的な光景であるはずなのに涙が流れっぱなし。
それぐらいに心を打つ美しい風景を描けるのは監督の技量なのでしょう。


あと劇中に出てくるご飯がホント美味しそう。

ユネスコ無形文化遺産に登録されたぐらいですからね。
やっぱ和食を美味しそうに描いてくれるとポイント大きいです。


そして、日々を丁寧に暮らす四姉妹と、四姉妹と繋がる人々。

キャスティングはピカイチ。
天然キャラのイメージが強い綾瀬はるかを始め、四姉妹はみんな最高でした。
個人的には、具体的に多くを語らぬ三女(夏帆)のキャラ設定が想像を膨らませられて好きでした。

脇も全くの隙間無くガッチガチに固められてます。
四姉妹が揃った絵ヂカラも凄いですが、全体的にかなり豪華なキャスティングです。


仕事や家事に追われると、日々の暮らしって雑になりがちですよね。

梅酒を漬ける梅仕事に代表されるような、劇中で繰り広げられる季節に合わせた丁寧な暮らしぶりは、観ていてとても心地良く刺激的でした。


例えば、経済的に困窮してたり、家族間での問題があったり、障害を抱えていたり。
自分の境遇と比べて恵まれていない人々のエピソードを目にすることで「こんな辛い思いしてる人もいるんだから自分はマシ」だと、目線を下げることで気持ちを前向きにすることが大嫌いです。
そうすることで自身の優位性を保つような行為には憎悪すら抱きます。

きっとそれって人間が根本的に持つ悪意なのだと思います。
不幸をウリにしたりチャリティしたりと、そんなテレビ番組って多いですものね。

かと言って、裕福で贅沢な暮らしを目線を上げて見たところで「あんな豪邸に住めて羨ましいなぁ」で終わりです。
自分の生活に比べてリアリティが無いので何も心に残りません。


そうではなくて、普通の暮らし(普通の定義はともかく)を見せられる中から自身を顧みて、改善すべきポイントに気付かされたり気持ちを前向きにしてもらえるような提示のされ方が好きです。

決して、劇中の四姉妹は不幸要素が無い家庭環境ではないんですが、そんな提示をしてくれる映画です。

親がいない状況で三姉妹が一緒に暮らしてて、そこに腹違いの四女が加わるわけなので、かなりレアな危なっかしい家庭環境です。

それでもテレビでありがちな、作為的に不幸をアピールするようなスタンスではないので、自身との境界線を強く意識するようなことは最後までありませんでした。


住む場所が鎌倉である必要は無く、一緒に暮らすのが四姉妹である必要もモチロン無く、いま一緒に過ごす人々との日々を季節を、丁寧に暮らすことが大事。

そんなことを改めて心の隅々にまで沁み渡らせてくれました。
もう1度映画館で観たいぐらいに気持ちの良い映画でしたが、DVDリリースされてからまた浸りたいと思います。

2015-08-18

Inside Out



ピート・ドクター監督「インサイド・ヘッド」


(※以下ネタバレ含みます)


「トイ・ストーリー」から続く流れがあるので、ピクサーの冠が付くだけでハードルが上がります。

ピクサーでなければそこそこ楽しめる中身だったとしても、ピクサーであれば許されないぐらいのハードルがあるわけです。
期待して面白くなかったら嫌だから期待しないようにしよう・・・と思ってても、心の奥底では期待が高まってしまう。


超えてきますね~。

ピクサー長編アニメーション20周年記念作品ということで気合いは入ってたでしょうが、こうも見事に超えてくると怖いぐらいです。
ピクサーの作品でこれぐらい圧倒されたのは「モンスターズ・インク」と「トイ・ストーリー3」以来ぐらいかも。
ホント素晴らしかった。


本編が終わって、エンドロールが流れて、お客さんが席を立ち、最後にボクも席を立ち、映画館を出てエレベーターに乗り、外に出てからも涙が止まりませんでした。

それぐらい上映中に嗚咽を堪えていたということ。

家でDVD観てるわけではないので、周りの人々の集中をそらしてしまうようなことは避けたい。
なので、幾度となく嗚咽しそうになっても、ただただ涙と鼻水を垂れ流しながら声が出ないよう堪えるわけ。
その押さえつけてた感情が、余韻と共にいつまでも収まらなかったということです。


吹替えキャストは今作でも抜群。
竹内結子も大竹しのぶもお見事でした。
そしてビンボンってアノ人(佐藤二朗)だったんですね。

キャラクターや舞台になる世界の設定、脚本の練られ度、細かい設定のディテール、後々に布石として効いてくる細かい前振りネタなど、お家芸とも言えるレベルの高い基本ベースは今作も健在。

一朝一夕で仕上げられるモノではないですからね。
圧倒的な才能が集結して、時間とお金を贅沢に使ってこそ仕上げられるモノです。

それだけのことが出来るのはディズニーというベースがあってこそだとは思いますが、お金や時間や才能だけではなく、ディズニーに息づく精神があってのことだと思います。


「盗作だ~」なんて一部のメディアが騒いでた「脳内ポイズンベリー」という作品があるように、感情を具現化して物語を紡ぐという方式は、新鮮でこそあれソコだけで作品が上物として完結するほどのプロットではないと思います。
下手すると難解になりかねません。

脳内世界の細かくワクワクさせられるディテールがあって、それぞれの感情の個性が際立ってて、そこから展開するストーリーは子供にもわかりやすく楽しめて、一緒に来た親のハートをガンガンに打つという。
さすがピクサーという設定の活かし具合でした。


もうビンボンのくだりなんて、ある程度の展開が読めてきてても涙腺は大崩壊ですよ。
忘れてしまうということの悲しさを否定的に提示しておいて、それは成長過程として大切なことなのだと肯定的に転ずる流れなんてお見事。

自分と照らし合わせウンウン唸って納得せざるを得ないのと同時に、自分の子供も同じように忘れていくのだという悲しさと、それが成長するということなのだと、喜ぶべきことなのだと自分をたしなめるジレンマで、ギュンギュンと胸が締め付けられる。
もう次から次に溢れてくる涙が渇く暇がありません。
鼻水なんて顎の下まで垂れ下がる始末です。


笑わせるところもしっかり笑わせてもらいました。

ライリー(主人公)以外の登場人物の頭の中の感情のやり取りは、スゴく良いアクセントになってます。
食卓を挟んだパパとママのやり取りのところとか最高だし、エンドロールのやつも面白かったですね。


一見ポジティブで圧倒的必要性を肯定的にとらえがちな「ヨロコビ」ですら「楽しけりゃいいじゃん」というKYで無責任な側面を覗かせ始め、「ヨロコビだけでは幸せになれないのではないか・・・」という疑問を抱かせつつ、その逆に何故に存在するのかさえ見えてこない「カナシミ」の存在意義が同時進行でフェードインしてくる。

ヨロコビ、イカリ、ムカムカ、ビビリ、カナシミという5つの感情だけでは説明のつかない感情を伴う思い出、そして両親の前で全てを吐き出した時に、胸に抱かれながら涙を伴い溢れだした感情。

「カナシミ」をきっかけとして他の感情によって生まれる「ヨロコビ」とはまた別のポジティブな感情(成長)や、5つの感情それぞれ単独のバトンリレーだけでは、心豊かに生きるも成長することも出来ないという終盤の展開には、悲しく辛い時は視野が狭くなって気付かないかもしれないけど、そんな時こそすぐ近くにその感情を昇華してくれる人がいるかもしれないという、自分を取り巻く周りの人々とリンクすることによって豊かになるであろう自分自身の人生を照らし合わせて、ホント心が温かく満たされました。


もう大絶賛なんですが、唯一残念だったのが・・・
誰もが戸惑ったであろう、あの誰トクな本編前のドリカムPV流し。

いつから始まったのやら“日本版主題歌”という無理やりに定義されたシステム自体が苦手で、映画自体を純粋に楽しみたい気持ちを毎回削がれつつも、さすがに最近は慣れてスルー出来るようにはなりました。

それでも今回の作為的なPV流しはあまりにも・・・。

本編を楽しみにワクワクしながら映画館へ足を運んだ人々を戸惑わせ、アガってた気持ちを下げるという・・・日本のディズニーはどのような大人の事情があって、ああいうことをやってしまったんだろう・・・。

ドリカムのファンですら戸惑ったと思います。
怒りの矛先がドリカムに向くようなことも無くは無いと思うので、結局のところ誰も得しないんですよね。

批判は多かったでしょうから、以後二度とやらないとは思いますが、本国のディズニーがよくOKしましたね。

2015-03-18

Big Hero 6



このままDVDかなぁ・・・と思ってましたが、「ベイマックス」滑り込みで観てきました。

面白かったです♪

僕が欧米人なら、観ながら「ウェ~イ!」と叫んでたでしょう♪
それぐらいにワクワクドキドキするし、とにかくサンフランソウキョウの舞台設定はカッコ良い。
和風な要素の入った「ブレードランナー」や「AKIRA」みたいな近未来が大好きなのでドツボでした。
ただこの街並みを流すだけのDVDが欲しいぐらい。

話の軸としては、ディズニーというハードルを考えると展開も分かりやすく、鮮度は低めだったりしますが、それを差し置いても余るぐらい好きでした。
1つのネタが布石として効いてたり、ディテールに遊び心が溢れていたりと、ディズニーらしい丁寧な仕上がりも健在で、童心に帰ってワクワク楽しめました。


ドラえもん的な国内プロモーション手法に関しては、映画の主軸になる要素でもあるので、プロモーションとして嘘はついてないし全然間違ってはないです。

とは言え、個人的にはやっぱり苦手です。

ここは個人的な好みになってくるんですが「愛」や「涙」みたいなものは、全面に押し出されないぐらいの前情報のほうが、実際に本編を観た時にグッとくるんですよね。
「愛に溢れてますよ~」とか「これは泣けますよ~」と言われてしまうと、それらの要素に対するハードルが上がってしまうし、ある意味でネタバレしてるような予定調和な感じになってしまって、感動が半減してしまう。

観てて不意打ちを食らいたいし、良い意味で裏切られたい人なので、あくまで個人的な趣向の話だと思います。

「アナ雪」の続編も決まったそうですが、きっとコレも続編やるでしょうね。